総合診療医 キャリアの軌跡

総合診療医がどこで何をしているか、どのようなキャリアを歩んできたかを一覧で示すことで、学生や医師のキャリアを考える助けになることを目指しています。変更や削除の希望、ご意見・ご感想は記事にコメントをお願いします。

66.岡山 女性 医師15年目

出身大学はどこですか?
九州大学


初期研修はどこの病院でしたか。また、初期研修のあと専攻医になるまでの経歴があれば教えてください。
洛和会音羽病院


所属、または卒業プログラム名を教えてください。卒業と現所属のPGが異なる場合、両方お書きください。現所属PGでトップページに振り分けます。
岡山家庭医療センター所属 

北海道家庭医療学センターにて後期研修修了


専攻医1年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
病棟研修 日鋼記念病院(室蘭市 大病院)にて緩和ケア(ホスピス)3か月弱、皮膚科2週間ほど、小児科3か月

その後、公立芽室病院(中小病院)にて内科6か月 同期間中 

週1回診療所(本輪西ファミリークリニック、更別村国保診療所)でのハーフデイバックあり


専攻医2年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
診療所研修 更別村国保診療所(農村)6か月(近隣の医療機関から離れており救急対応あり)、

本輪西ファミリークリニック(室蘭市にある外来診療・在宅医療中心のプライベートクリニック)6か月

一時期 週1回の腹部エコー研修あり


専攻医3年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
診療所研修 礼文町立船泊診療所(離島唯一の救急対応のできる重装備型診療所)6か月、

上川家庭医療センター(山間部にある、観光地を有し二次・三次医療機関から1時間ほど離れた、病院から診療所化した老健併設型の診療所)6か月


それ以降の勤務場所、勤務内容を教えてください。
6年目~7年目の途中 千葉県立東金病院内科(後期研修プログラムあり)

8年目~ 岡山家庭医療センター(診療所;外来診療、訪問診療)


現在の勤務先と、勤務内容について教えてください。
診療所 育休直後で大学院在学中のため非常勤勤務


初めて総合診療医に会った、総合診療医のことを知ったのはどんな時でしたか?
大学4年生のとき、当時佐賀県三瀬村の所長をされていた白浜先生の新聞記事をみて知りました。その後、大学5年生の夏に医学生・若手医師のための家庭医療学夏期セミナーに参加し多くの先生方にお会いして、患者やその家族、地域に寄り添う医療の形をいいなと思いました。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修しようと思った理由、総合診療医になろうと思った理由を教えてください。
臨床初期研修必修化2年目にあたり、初期研修2年目になるときに家庭医療専門研修がはじまりました。大学5年生の頃から家庭医療について学ぶようになり考え方にかなり親和性を感じていたものの、初期研修から家庭医療に力を入れているところへ行くことまでは考えていませんでした。しかし、研修を受けるうちにやはり家庭医療を本格的に学びたいと考えるようになりました。進路を考えていた時期に道ができたことも助けとなり、今後家庭を持つことを考えると身軽なうちに実力を身に着けた方がよいと考え、これを逃したら学ぶことが難しくなるだろうしよいチャンスだと思い飛び込むことにしました。


プログラムや勤務病院選びの際にはどのように情報収集しましたか?
夏期セミナーや各地で行われているWS等で知り合った学生・先生方から情報収集しました。


進路選択で重視したポイントや、プログラムを選択したポイントは何でしたか?
実力をつけられるような教育体制が充実していること、教育実績があること 一本筋の通った目標や価値観があり、雰囲気も含めて自分や自分の価値観と乖離しないこと


専攻医、総合診療医になる前に、心配だったことがあれば教えてください。
引越しが多いことが予想されていたので、度々変わる新しい環境で自分が持つかが心配でした。医師として真摯に仕事をしていればどこでも働いていけると思っていたので、家庭医になること自体には、不安はありませんでした。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修してよかったこと、総合診療をやっていてよかったことを教えてください。
どんなことでも、患者さんのちょっとした一言から困っていることを拾い上げて対応することができて、患者さんの日々を楽にできたり喜んでもらえたりすることにやりがいを感じています。また、赤ちゃんから超高齢者までいろいろな患者さん、ご家族のどなたにも関わることができるのもうれしいですが、その家族の形を理解して合う形の医療を考え、本人・家族や他職種とのすり合わせを経てバランスをとりながら看ていけたり穏やかな看取りにつながったりしたときに、やっていてよかったなと思います。


専門医を取るに当たって、あるいは総合診療医として働いていてどのような障壁があります(した)か。また、それをどう乗り越えたか教えてください。
もともと初期研修からの一貫教育を行っていた組織で、夏期セミナーにいくら毎年参加していても同期や後輩との知識量に差を感じ、雰囲気になじむのに時間がかかりました。一時期は、初期研修でしっかり教わっていたはずのことにも自信をなくし、学ぶ以前に意欲が持てなくなりハーフデイバックを休んだこともありました。結局は、自分らしく仕事に向き合い、それを患者さんや職場で評価されることの積み重ねと、もともとの知り合いに会ったりして外からの視点を持つことで少しずつ自分を取り戻したように思います。教育面は充実していて実力はつきましたが、そこは大変でした。 専門医取得直後の勤務先が、後期研修プログラムではあるものの実質的に指導医不在の状態で、そこにいる同僚は家庭医療への理解もぼんやりしていて困惑しました。黎明期はやむをえないことも理解していたので、自分がどうにかするしかないと腹をくくって、診療しつつにわか指導医として実年齢が上の専攻医たちに定期的に指導を行いました。途中で妊娠し診療はそう長い期間関われなかったのですが、専攻医たちの家庭医療への理解を進め修了に貢献できたことは自分の自信にもなりました。 結局は実践や教育を通して、専門医一人一人が家庭医の存在意義を示していくことが重要と思います。


ワークライフバランスについてのお考えや、何か工夫されていることがあれば教えてください。
医師の仕事は、細く長くであっても続けてさえいればどうにかなります。 自分のキャリアもパートナーのキャリアももちろん大事にしたいですが、家庭のことはそのとき自分が動かないとどうにもならないこともあるので、その時々で自分の大事なことは何か優先順位を考えつつ、家族としてどう対応するかを話し合うようにしています。


今、力を入れていることや、今後やりたいこと、興味のある分野について教えてください
キャリア支援やダイバシティの推進に力を入れています。まだまだ総合診療医になってからどのような仕事をしていくか決まった形があるわけではありませんが、どんな人でも自分らしく働いていけるような環境や支援体制を整えていきたいと考えています。 そのため、現状調査や研究もしたいですし、教育や指導医養成にも関わり続けていきたいと思っています。


家庭医療(総合診療)を志す学生や医師にメッセージや今後の意気込みなど一言お願いします。
患者さんや地域からのニーズがダイレクトに感じられて、人との関わりが好きな人に向いている仕事と日々感じます。大変なことももちろんありますが、今の日本で確実に求められている領域で、やりがいをもって取り組めると思います。 妊娠・出産・介護、自分や家族の病気の経験も、それを経験した人だからこそ提供できる医療があります。自らの経験も活かせるような、そんな懐の深い医療を一緒に目指していけたらうれしいです。