総合診療医 キャリアの軌跡

総合診療医がどこで何をしているか、どのようなキャリアを歩んできたかを一覧で示すことで、学生や医師のキャリアを考える助けになることを目指しています。変更や削除の希望、ご意見・ご感想は記事にコメントをお願いします。

22.富山 男性 医師11年目

出身大学はどこですか?
福井大学


初期研修はどこの病院でしたか。また、初期研修のあと専攻医になるまでの経歴があれば教えてください。
南砺市民病院10年、南砺家庭・地域医療センターと砺波総合病院を6カ月ずつ


所属している、または卒業したプログラム名を教えてください。(URLがあれば貼っていただければリンクできます)
とやまNANTO-RENKEI総合診療医養成プログラム 

http://shiminhp.city.nanto.toyama.jp/www/syoki/nanto_renkei.jsp


専攻医1年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
南砺市民病院で総合内科を1年通年で病棟、救急、外来、訪問診療を続けていました。初期研修の後半から総合診療研修を受けていたので、職場の人間関係を再構築する必要もなく、患者さんとの継続性を意識できる毎日でした。能力に応じて担当疾患の数や領域を調整していただけるので、適度な負荷をキープできました。


専攻医2年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
南砺家庭・地域医療センターでの診療所研修では外来研修を全症例カルテレビューし、指導医との毎日の振り返りで疑問がでたらUpToDateで復習する毎日で、毎月Mini-CEXによる外来評価、3カ月おきに360度評価もあり、McWhinneyのTextbook of Family Medicineと、Moira StewartをPatient-Centered Medicineを読む課題を課された濃密な時間でした。家庭医療の基礎を叩き込まれた半年でした。 小児科研修は南砺市民病院小児科で2カ月、小児科医が後ろにいる安全な状態でスピーディーに予防接種、乳児研修、小児科外来を1人で回すトレーニングと、外来終了後にネルソン小児科学のプライマリケアに必要なところを指導医と一緒に読み、UpToDateを参考にまとめるというという地味なトレーニングを受けていました。市立砺波総合病院で小児科1カ月、救急3カ月を過ごしました。この期間はプライマリケアではなかなか経験できない豊富な症例のシャワーを浴びる期間でした。


専攻医3年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
専攻医1年目の南砺市民病院研修と同じです。プログラム終了後も南砺市民病院でスタッフをする予定であったため、専攻医1年目から着手していた臨床研究をまとめたり、嚥下チームやNST委員会、褥瘡委員会などを通じて院内を横断するチーム医療を経験していました。初期研修医の教育をしながら、外来・病棟・救急・在宅診療を行うためタイムマネジメントを学ぶ機会になりました。


それ以降の勤務場所、勤務内容を教えてください。
南砺市民病院にスタッフとして残り、入院・外来(内科継続外来・総合診療外来)・救急・在宅・健診業務・精神科単科病院の内科コンサルト担当・山間部の診療所の応援・近隣施設の産業医・摂食嚥下チーム・倫理コンサルテーションチーム・各種委員会で院内を横断的に関わり、教育面では家庭医療専門医プログラムの教育、看護師特定行為研修責任者、臨床教育研修センターの業務を行っています。単なる何でも屋(jack of all trades, master of none:《諺》 何でもやれる人に優れた芸はない, 「多芸は無芸」, 「器用貧乏」)のようにも見えますが、オールラウンダー型GPやspecial interest型GPだけでなく、expert generalist practiceすなわち各個人のニーズを明確に定義し対処するために、解釈的実践を使用する卓越したGPになるべく毎年努力の連続です。

引用元:Lord Moranの梯子を解体する:卓越したジェネラリストについて - 南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました。


初めて総合診療医に会った、総合診療医のことを知ったのはどんな時でしたか?
大学6年の7週間の学外実習で紅谷医師(現:オレンジホームケアクリニック)と出会ったのがきっかけ。「救急医か麻酔科医志望なのでそういうの興味ないです」と初日に言った私に、「家庭医療を知っている救急医にでも麻酔科医にでもなればいい」と家庭医療のコアレクチャーと毎日4分割の振り返りを受けているうちに、最後の挨拶で「南砺市で家庭医療をやる」と宣言してしまっていた。

引用元:病院総合診療医に関して、思うところ(その1) 自分語り多め - 南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修しようと思った理由を教えてください。
ブログにも記載しましたが「役に立つ」と直感したからです。 幅の広さが売りであるならば勉強することが山ほどあることへの興味もありました。 領域別に進みながら総合的なアプローチもできたかもしれませんが、私の性格上「専門に逃げそう」だったので、あえて専門を持たなくても良さそうな道を選んだという理由もあります。

引用元:病院総合診療医に関して、思うところ(その1) 自分語り多め - 南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました。


プログラム選択の際にどのように情報を収集しましたか?
正直言って働く場所ありきで決めた所もありましたが、指導医にも恵まれ、患者さんとの距離も地元であることが有利に働いたと感じています。プログラムに入ってから、他プログラムとの交流を通じて自身の研修を修正していました。SNSなどで情報収集できて、縦のつながりも横のつながりも作りやすくなったので、プログラムの垣根を越えて相談することもできるはずです。自分次第でどうにでもなります。


進路選択で重視したポイントや、プログラムを選択したポイントは何でしたか?
医師になる動機が「南砺市に貢献すること」だったので、いつかは帰ってくる場所でした。たまたま初期研修から開始したのは、初期研修医の視点で病院の隅々まで経験したかったという狙いがあったのと、患者さんやその家族、医療スタッフと長い付き合いができると単純に思ったからです。


専攻医になる前に、専攻医について心配だったことがあれば教えてください。
合格実績が無かったので、暗中模索なところはありました。暗中模索であっただけに、無駄なこともいっぱい勉強しましたが、無駄と思える事が自分の幅を広げたと思っています。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修してよかったことを教えてください。
人との対話が飽きない。新しい知識も増えて飽きない。とにかく毎日が面白い。


専門医を取るに当たってどのような障壁があります(した)か。また、それをどう乗り越えたか教えてください。
研究の壁があるかと思われたが、臨床研究の指導医が全面サポートしてくださった。家庭医療の理論的なところも、どこまでが必須なのか分からずとにかく原著を読み漁っていたが、もっと上手な情報収集は出来たかもしれない。


今後やりたいことや興味のある分野について教えてください。
今は、臨床倫理、摂食嚥下障害、終末期医療、Multimorbidity、リハ栄養、整形内科、嚥下エコー、家庭医療の論文紹介などが興味のあるジャンルのようだ(南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました。 2020年1月1日現在)とにかく興味の赴くままに進めていきたい。 強いて挙げればブログでの発信が興味ある事なのかもしれない。


家庭医療(総合診療)を志す学生や医師にメッセージや今後の意気込みなど一言お願いします。
最初から家庭医療一筋で進む人も、何かサブスぺを取ってから家庭医療に進む人も、家庭医療を学んでから領域別に進む人も、みんな正しいです。とにかくぼんやりと総合診療を心のどこかに置いて、皆さんが信じる道を進んで下さい。