総合診療医 キャリアの軌跡

総合診療医がどこで何をしているか、どのようなキャリアを歩んできたかを一覧で示すことで、学生や医師のキャリアを考える助けになることを目指しています。変更や削除の希望、ご意見・ご感想は記事にコメントをお願いします。

26.北海道 男性 医師9年目

出身大学はどこですか?
旭川医科大学


初期研修はどこの病院でしたか。また、初期研修のあと専攻医になるまでの経歴があれば教えてください。
江別市立病院(当時は総合内科を中心とした研修の出来る病院でした)


所属している、または卒業したプログラム名を教えてください。(URLがあれば貼っていただければリンクできます)卒業PGと現在所属のPGが異なる場合、両方お書きください。振り分けは卒業PGで行います。
北海道家庭医療学センター家庭医療専門医コース


専攻医1年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
寿都町寿都診療所 人口3000人台の町の有床診療所で勤務していました。外来、入院、訪問診療、救急と何でもやらなければならない環境でした。今にして思えば、この1年の経験が今の自分の医師としての礎になっていると深く感じています。特に救急は町内で要請のあった救急車は超重症であっても診療所でまず受ける仕組みだったので、大変でした。何も出来ないので指導医に相談しながら(迷惑かけまくりでしたが)、1つ1つ経験を積み重ねていきました。出来ないことが多かったですが、その後医師5年目・6年目に代診などで診療させていただく機会があり、その時に「あの頃はこんなことも出来なかったんだよな」と自分の"定点観測"の場所となりました。


専攻医2年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
勤医協中央病院 総合診療センター(6ヶ月)/消化器内科(2ヶ月)/緩和ケア科(1ヶ月)、 勤医協札幌病院 小児科(3ヶ月) 当時のプログラムでは自前の病棟研修施設がなかったため、道内の他のプログラムのある病棟での研修でした。総合診療センターでは入院を中心とした研修で幅広い疾患を経験させていただきました。入院の管理や外科に依頼する症例の相談などの経験を積めました。また、血液内科との混合病棟だったので、血液疾患も何例か経験させていただきました。 小児科では入院患者は少なかったのですが、外来での経験をかなり積ませていただきました。ワクチン外来や乳児健診も経験でき、適宜フィードバックをいただけたので、その後の小児の外来の自信を深めていくことが出来ました。 また、当時のプログラムでは病棟研修期間中に1ヶ月の自由選択期間があり、緩和ケアの研修をさせていただきました。学生時代から興味のあった領域で、将来はきちんとした形で研修をしたいと考えていたので、ここでの経験がその後の進路にも大きな影響がありました。


専攻医3年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
栄町ファミリークリニック 札幌の無床診療所で外来と訪問診療が半々くらいの環境で勤務しました。外来では前身が外科系のクリニックだったこともあり、都市部であるにもかかわらず整形外科系の経験を積むことが出来ました。小児の受診も多かったですし、成人の外来もバランスよく経験できた場所でした。 訪問診療は数もかなり多く、がん・非がんの在宅看取りも多かったです。訪問リハビリテーションも併設していたので、リハビリ領域も理学療法士と相談しながら患者さんのADL向上に大きく関わる経験も出来ました


それ以降の勤務場所、勤務内容を教えてください。
専攻医3年目に勤務したところでもう1年勤務しました。 家庭の事情で実家近くでの勤務が必要になったことや、訪問診療での経験からもっと緩和ケアを深めたいという思いから、医師7年目からHCFMを離れ、札幌南青洲病院(現 札幌南徳洲会病院)緩和ケア内科医師として入職しました。 メインはホスピスでの勤務ですが、一般病棟で内科やリハビリ目的の入院患者管理や、内科の外来も担当しています。専門外来もあるのですが、ほぼ総合診療外来と同じような感じで、これまでの経験を存分に発揮できています。 また、医師8年目からは褥瘡チーム担当、9年目からは嚥下チームや透析業務の一部も関わらせていただき、総合診療医としての幅を広げていっています。


初めて総合診療医に会った、総合診療医のことを知ったのはどんな時でしたか?
知ったのは北海道で放送されていた番組で楢戸健次郎先生や前沢政次先生のことが紹介されていたのを見たときに知りました。実際に初めて会ったのは大学2年で参加した「家庭医療学夏期セミナー」の時でした。その時に基調講演をされていた先生が実家から比較的近いクリニックで勤務されていたので、大学が休みの時に見学させてもらったのが実際に家庭医の診療を目の当たりにした初めての時でした。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修しようと思った理由を教えてください。
私は再受験で医師を目指したのですが、最初は児童精神医学に興味がありました。その中で、「心だけではなく身体も診たいな」との思いが強くなったときに知ったのが家庭医療で、その後は一貫して志望は変わりませんでした。 


プログラム選択の際にどのように情報を収集しましたか?
家庭医療学夏期セミナーでのポスターセッションや懇親会で色んなプログラムの先生方とお話しし、その後実際に見学に沢山行きました。今思えば初期研修の見学より後期研修の見学の方がかなり数多く行ってました。


進路選択で重視したポイントや、プログラムを選択したポイントは何でしたか?
家庭医養成の歴史があり、教育の質がしっかりしていることでした。専攻医はあちこち離れて研修しましたが、テレビ会議システムでの講義や定期的に専攻医が集まっての勉強会などあり、ばらばらの環境の中で、どこに居てもきちんと学べる機会が保証されているのが大きかったです。 また、家庭の事情で地元を離れるのが難しかったので、札幌で研修が出来る所を考えていたというのも大きなポイントでした。


専攻医になる前に、専攻医について心配だったことがあれば教えてください。
初期研修だけの内科の経験で足りるのだろうかという心配がありました。それについては入職決定前に指導医の先生に相談し、心配はいらないとの話を伺って、初期研修修了してすぐに専攻医になることを決めました。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修してよかったことを教えてください。
まず何でも診るという姿勢でいられるのは研修の効果だと思います。また、今専門にしている緩和ケアは、もちろんオピオイドなどの薬剤も大事ですが、患者さんやご家族の背景やナラティブな部分がものすごく大切なので、毎日が患者中心の医療の方法や家族指向型ケアの究極の実践なので、家庭医療の理論が非常に役立っています。


専門医を取るに当たってどのような障壁があります(した)か。また、それをどう乗り越えたか教えてください。
ポートフォリオの作成が大変でした。特に勤務も忙しかったので作成の時間確保が大変でしたね。ただ、常に勤務先の直接の指導医からエントリー領域に関しては相談に乗ってもらっていたので、各領域に対応する事例や症例がないということはありませんでした。学会提出前に法人内の指導医の先生達からの合格をもらわなくてはならないので、かなり厳しかったですが、非常に役立ちました。


今後やりたいことや興味のある分野について教えてください。
今は緩和医療専門医を取るために臨床や研究を頑張っているところです。がんに限らず終末期医療やコミュニケーション、高齢者ケアの領域に興味を持っています。


家庭医療(総合診療)を志す学生や医師にメッセージや今後の意気込みなど一言お願いします。
今の時代、病院で亡くなることが難しくなってきています。これからの時代、その傾向はますます顕著になって来ると思います。そんな時にバランスを持って患者さんの相談に乗れるのは総合診療医です。 サブスペシャリティーなど気になることもあるかもしれませんが、今2階部分として挙がっている緩和ケアは家庭医療・総合診療との親和性は非常に高いと思います。緩和ケア×総合診療の面でお手伝いできればと思っています。