総合診療医 キャリアの軌跡

総合診療医がどこで何をしているか、どのようなキャリアを歩んできたかを一覧で示すことで、学生や医師のキャリアを考える助けになることを目指しています。変更や削除の希望、ご意見・ご感想は記事にコメントをお願いします。

54.佐賀 女性 医師15年目

出身大学はどこですか?
佐賀大学


初期研修はどこの病院でしたか。また、初期研修のあと専攻医になるまでの経歴があれば教えてください。
親仁会米の山病院(福岡県大牟田市


所属、または卒業プログラム名を教えてください。卒業と現所属のPGが異なる場合、両方お書きください。現所属PGでトップページに振り分けます。
所属:唐津市民病院きたはた総合診療専門研修プログラム

卒業:親仁会米の山病院家庭医療プログラム(Ver.1)


専攻医1年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
親仁会米の山病院総合診療(総合診療Ⅱ)12か月  

200床弱の急性期病棟で、内科疾患の患者について、病棟・科の隔たりなく患者を担当し、Commonな内科疾患の入院管理が行えるようになりました。同時に、毎週1単位の外来研修・2単位の救急当番にて、初診患者のマネジメント、慢性疾患や退院後の患者のフォローもできるようになりました。個人的に、その後の進路として考えていた診療所で行っていた上部消化管内視鏡についても、この期間に身につけました。


専攻医2年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
親仁会みさき病院(選択)12か月 

認知症・高齢者研修&訪問診療研修  

福岡県大牟田市は、当時10万人以上の都市で全国一の高齢化率の町でした。そこで療養病棟でありながら認知症を専門に受け入れる病棟をたちあげている同法人の病棟での認知症治療のマネジメント、物忘れ外来研修、および在宅まで含めた管理を学びました。


専攻医3年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
奄美医療生協南大島診療所(総合診療Ⅰ) 6か月  

縁あって、奄美大島の僻地の診療所で診療所研修をさせていただきました。外来診療、病棟(有床診療所だったので)、訪問診療に加え、副所長として診療所の管理業務も学びました。

福岡医療団千鳥橋病院小児科(小児科) 3か月  

一次~二次救急も受ける小児科でしたが、外来ではたくさんのCommonな疾患を経験し、病棟でのマネジメントもたくさん経験できました。経済的に問題のある家庭の入院なども多く、社会的側面について考える症例もそれなりに経験させていただきました。

福岡医療団千鳥橋病院皮膚科(選択) 2か月   

診療所に出るときに自信がなかったところだったので

福岡医療団千鳥橋病院耳鼻科(選択) 1か月

当初皮膚科3か月の予定でしたが、同じ病院にめまいについて詳しい先生がいらっしゃるということと、小児科とも連携していて「子供の中耳炎は見逃さないようになる」という自身の目標もクリアしたかったので、急きょ入れてもらいました。


それ以降現在までの勤務場所、勤務内容を教えてください。指導医の先生はこれまでのキャリアの変遷について教えてください。
6年目~9年目 

佐賀県医療生協神野診療所

10年目 ほくと医療生協浮間診療所(佐賀県医療生協からの出向研修)CFMD東京・指導医

11年目~12年目 佐賀県医療生協神野診療所  ※12年目:家庭医療専門医取得 12年目~現在 唐津市民病院きたはた(プログラム指導医)


初めて総合診療医に会った、総合診療医のことを知ったのはどんな時でしたか?
プログラムを作るからもう少し病院に残る?と言われたときに、存在を初めて知りました。それより前から家庭医療学会には入っていましたが、あまり専門医に興味がなく、気にしていなかったので。 各科の先生たちから専門は持ってた方がいいよ!というのが耳にタコになるくらい聞いていた後だったので、逆にこういう分野も専門になりえるんだ、うれしいという感じでした。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修しようと思った理由、総合診療医になろうと思った理由を教えてください。
学生時代に、当時行く予定だった初期研修病院や関連診療所で訪問診療研修などをさせてもらい、こういう町のお医者さんになりたかった!そういう道があるんだ!と思って、初期研修先を選びました。 私は、マッチングも2期生だし、家庭医療プログラム自体も始まって2年目の年でしたので、あまり専門研修を受けるという感覚はなく、初期研修が終わったら、診療所にいくぞ!としか思っていなかったのですが、初期研修医の途中から指導医になってくださった先生から、「家庭医療プログラムというのがあって、希望するなら作ろうか?」と言われて、診療所に出る前にそのための教育が受けられるなら作ってもらおう、と思ったのがきっかけです。


プログラムや勤務病院選びの際にはどのように情報収集しましたか?
上記の通りでしたので、「もう少し病院で研修するなら診療所でも役立つ家庭医療プログラム作るよ」と言われた結果、私のために作ってもらったような内容だったので、情報収集していません(笑)。今考えると、かなり贅沢な対応をしていただきました。研修先が上記のように選択研修がたくさんなのも、すべて自分が学びたいと思ったのを詰め込んでもらった結果なのと、もともと鹿児島出身ということもあって、離島医療も興味があったことから、診療所研修も本当にカスタマイズされたものになっております(笑)。 研修終了後は、念願の診療所勤務をしていましたが、10年目にCFMD東京に1年間出向研修に行かせてもらい、周りにたくさん家庭医がいる状況ということに驚き、刺激を受け、そういう基盤を作りたいなと思いながら佐賀に戻ってきました。そこで刺激をもらって、ようやく専門医を取得する気持ちにもなりました(笑)

現在の勤務先は、佐賀県で家庭医療専門医(今後は総合診療専門医)をとにかく育てたい、という思いで選びました。いまだ県内プログラムからは卒業生が出ていないので、その第1号の育成に関わりたくて、声をかけてもらったときに、移った次第です。


進路選択で重視したポイントや、プログラムを選択したポイントは何でしたか?
上記の通りで、自分用のプログラムだったので、あまりないです。そのプログラムの1人目だからできたことかもしれませんが(^^;


専攻医、総合診療医になる前に、心配だったことがあれば教えてください。
あまりなかったです。専門医などの肩書が苦手だったので・・・科に関係なく、目の前の患者さんの主治医として頑張れる存在になりたいと思っていたので、それができればよいと考えていました。それをかなえる研修自体は興味があって受けましたが、専門医の肩書はあまり希望していなかったので、試験を受けたのは研修終了後、相当後になりました(^^;


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修してよかったこと、総合診療をやっていてよかったことを教えてください。
「それを自分に言われても困る、自分の担当じゃない」と患者さんに言わずに済んでいるところ。基本的には、どんなことでもまずは自分でファーストタッチできるのがうれしいです。


専門医を取るに当たって、あるいは総合診療医として働いていてどのような障壁があります(した)か。また、それをどう乗り越えたか教えてください。
今のプログラムでは、必須カリキュラムも増え、それをどこで学ぶかという事、必然的にいろんな施設を回ることになる可能性があることなどから、生活面の保障(通勤時間の増加・場合によっては引っ越しが必要になることなど)が一番大変そうだと思います。 また、現在いる地域での障壁としては、総合診療専門医を育てるというのはどうすればいいかということが、家庭医療専門医以外の先生には知られていないため、外の施設を回る際に、どこまで「総合診療医に必要なこと」を学ばせてもらえるかという心配があります。 自分の場合は、回った先の指導医の先生方が「地域の診療所で医療をするときに知っていてもらいたい事」ということを軸に持っている先生ばかりでしたので、ありがたかったです。


ワークライフバランスについてのお考えや、何か工夫されていることがあれば教えてください。
職場の仕事は家に持ち込まない(仕事以外の内容の勉強やタスクは家で行う)。家族と趣味の時間をしっかりとる(月単位でみてとれているようにする)。日々の睡眠時間確保(日中のパフォーマンス維持)。


今、力を入れていることや、今後やりたいこと、興味のある分野について教えてください。
医学教育に絡むこと 卒前・初期研修・専攻医研修どれも力を入れていきたいです。
家庭医療(総合診療)を志す学生や医師にメッセージや今後の意気込みなど一言お願いします。
自分がプログラムを選択する前から「何かの専門だけはとっておいたほうが」という周囲の声は多かったし、専門プログラムを受けてからも「何かの専門だけは取っておいた方が」という周囲の声は消えなかったし、いまだ雑音の多い分野ではありますが、なりたいと思って突き進んでいけば、それらの心配は結局杞憂だったなと思います。興味がある方は、ぜひ飛び込んでみてください。