総合診療医 キャリアの軌跡

総合診療医がどこで何をしているか、どのようなキャリアを歩んできたかを一覧で示すことで、学生や医師のキャリアを考える助けになることを目指しています。変更や削除の希望、ご意見・ご感想は記事にコメントをお願いします。

118. 海外 男性 医師8年目

出身大学はどこですか?
琉球大学


初期研修はどこの病院でしたか。また、初期研修のあと専攻医になるまでの経歴があれば教えてください。
沖縄県立中部病院


所属、または卒業プログラム名を教えてください。卒業と現所属のPGが異なる場合、両方お書きください。現所属PGでトップページに振り分けます。
島医者養成プログラム(総合診療プログラム)


専攻医1年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
研修場所:基幹総合病院、協力総合病院 
研修内容:専攻医2年目から離島診療所で自立して勤務できるために全診療科を網羅的に学ぶ


専攻医2年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
研修場所:離島診療所
研修内容:島内唯一の医師として島内の健康管理を行う


専攻医3年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
研修場所:離島診療所
研修内容:専攻医2年目に引き続き、島内唯一の医師として島内の健康管理を行う


それ以降の勤務場所、勤務内容を教えてください。

神奈川県内の家庭医クリニックで在宅診療、東京都内の慢性期病棟で病棟管理


現在の勤務先と、勤務内容について教えてください。
海外(オランダ)にて修士課程に進学中:高齢者の医療を軸に終末期医療の在り方(安楽死の議論も含む)や健康観の在り方(ポジティヴヘルスなど)について研究中


初めて総合診療医に会った、総合診療医のことを知ったのはどんな時でしたか?
医大生の頃、へき地診療実習で沖縄県のある集落の診療所で実習をした時


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修しようと思った理由、総合診療医になろうと思った理由を教えてください。
総合診療医の医療に捉われない、幅広い視点からの「病だけではなく人を診る」姿勢と自分の理想とする医師像が合致したため


プログラムや勤務病院選びの際にはどのように情報収集しましたか?
主に周囲の人(大学の先輩、同級生)や県外で病院見学や勉強会セミナーなどで知り合った同級生や先輩医学生などの話を元に主に情報収集した


進路選択で重視したポイントや、プログラムを選択したポイントは何でしたか?
とりわけ、離島診療所で自立して働きたいという希望があったためそれが叶うプログラムを元に選択


専攻医、総合診療医になる前に、心配だったことがあれば教えてください。また、不安がその後どうなったのか教えてください。
自分がなりたい医師像がそこにある!という思いがあり、特に心配事はありませんでした


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修してよかったこと、総合診療をやっていてよかったことを教えてください。
人を診ることの深さ、難しさ、そして楽しさを学んだ、そして今後の医師としての診療姿勢にも非常に影響を受けています


専門医を取るに当たって、あるいは総合診療医として働いていてどのような障壁があります(した)か。また、それをどう乗り越えたか教えてください。
総合診療医であるが故に医療に止まらない社会的な面を含めた全人的なサポートを患者さんに提供する一方で、医師としての専門性(アイデンティティ)をどう自分の中で確立、定義させるか悩んだ時期がありましたが、その全人的なサポートこそが専門、むしろあまり「専門」という言葉に捉われないようにしようという心情になり、乗り越えられるようになりました


ワークライフバランスについてのお考えや、何か工夫されていることがあれば教えてください。
自分がやりたい、挑戦したいことに「素直」になること、やらない後悔よりやる後悔をとること


今、力を入れていることや、今後やりたいこと、興味のある分野について教えてください。
現在:安楽死や健康観についての研究
今後の目標:日蘭両方での家庭医として働くこと、日本における死に関わる議論の脱タブー化や健康にまつわる自主的な意思決定の普及について貢献したいです


家庭医療(総合診療)を志す学生や医師にメッセージや今後の意気込みなど一言お願いします。
少しでも家庭医療に興味を持ったらその世界に飛び込んでみて下さい。その先にあるのは「無限大」の医療の本質だと思います

117. 茨城 男性 医師39年目

出身大学はどこですか?
東京医科大学


初期研修はどこの病院でしたか。また、初期研修のあと専攻医になるまでの経歴があれば教えてください。
東京医科大学病院 当時「専攻医」はありません


所属、または卒業プログラム名を教えてください。卒業と現所属のPGが異なる場合、両方お書きください。現所属PGでトップページに振り分けます。
当時「卒業プログラム」はありませんでした


専攻医1年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
東京医科大学病院 で外科の講座をすべて周りました


専攻医2年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
東京医大病院外科と、同病院麻酔科に3か月、東京医大八王子医療センター麻酔科に3か月


専攻医3年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
東京医大八王子医療センター 腎臓外科、心臓外科で手術等研修


それ以降の勤務場所、勤務内容を教えてください。
東京医大病院心臓外科に勤務、2年半ほど留学(米国 Harbor UCLA Medical Center)


現在の勤務先と、勤務内容について教えてください。
誠潤会水戸病院 心臓血管外科、総合診療科


初めて総合診療医に会った、総合診療医のことを知ったのはどんな時でしたか?
大学で外科をやっていたとき、大学に総合診療医はいなかったが、なりたいと思った


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修しようと思った理由、総合診療医になろうと思った理由を教えてください。
専門分化しすぎる状況で、総合的に診られる医師(内科も外科もできる医師)になりたかったから


プログラムや勤務病院選びの際にはどのように情報収集しましたか?
総合医のプログラムは履修していません。留学も含め、現在の病院以外では大学病院しか勤務経験ありません。とはいえ、かなり他科の勉強もできました。


進路選択で重視したポイントや、プログラムを選択したポイントは何でしたか?
「心臓外科医」になることを目的として進路を選んできたのでそれを基本に選択しましたが、総合的に診るため他科の経験を積むことを意識してきました。結果として、外科専門医、心臓血管外科専門医以外に、救急科専門医や循環器内科専門医、家庭医療専門医にもなれました。


専攻医、総合診療医になる前に、心配だったことがあれば教えてください。また、不安がその後どうなったのか教えてください。
「総合診療医」のみであれば不安を持ったでしょうが、サブスぺと考えたので不安はありませんでした。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修してよかったこと、総合診療をやっていてよかったことを教えてください。
一般病院に勤務すると「専門科」以外の診療が多く、総合診療の知識が必要になる。


専門医を取るに当たって、あるいは総合診療医として働いていてどのような障壁があります(した)か。また、それをどう乗り越えたか教えてください。
病院で「総合診療科」を標榜しようとしたら、保健所で「そのような診療科はないので院外掲示は認めない」と院外掲示を認められなかった。結果、院内のみ掲示している。


ワークライフバランスについてのお考えや、何か工夫されていることがあれば教えてください。
ワークライフバランスの重要性は理解しているが、地方では難しい。


今、力を入れていることや、今後やりたいこと、興味のある分野について教えてください。
高齢(64歳)になったができる限り手術はしてゆきたい。血管外科を主にやっているが、血管内科にも力を入れてゆきたい。


家庭医療(総合診療)を志す学生や医師にメッセージや今後の意気込みなど一言お願いします。
本邦の総合診療あるいは家庭医療は学会としてかなり内科に傾倒している。総合診療医は総合内科医ではないので、外科、産婦人科など、外科系の知識・技術の習得に努力して欲しい。

116. 神奈川県 男性 医師10年目

出身大学はどこですか?
鳥取大学


初期研修はどこの病院でしたか。また、初期研修のあと専攻医になるまでの経歴があれば教えてください。
佐久総合病院


所属、または卒業プログラム名を教えてください。卒業と現所属のPGが異なる場合、両方お書きください。現所属PGでトップページに振り分けます。
CFMDレジデンシー東京


専攻医1年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
川崎協同病院


専攻医2年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
川崎協同病院、慈恵医大救急科、井田病院緩和ケア科


専攻医3年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
久地診療所


それ以降の勤務場所、勤務内容を教えてください。
久地診療所、外来&在宅


現在の勤務先と、勤務内容について教えてください。
外来&在宅


初めて総合診療医に会った、総合診療医のことを知ったのはどんな時でしたか?
信州に上医ありをよんで


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修しようと思った理由、総合診療医になろうと思った理由を教えてください。
専門外だから他にいきなさい、と言わない医師になりたかったため


プログラムや勤務病院選びの際にはどのように情報収集しましたか?
インターネット、口コミ


進路選択で重視したポイントや、プログラムを選択したポイントは何でしたか?
幅広い研修、充実した指導体制


専攻医、総合診療医になる前に、心配だったことがあれば教えてください。また、不安がその後どうなったのか教えてください。
ポートフォリオを書いたことがない、家庭医のいないプログラムの多さ


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修してよかったこと、総合診療をやっていてよかったことを教えてください。
プライマリーケアを担えているという実感


専門医を取るに当たって、あるいは総合診療医として働いていてどのような障壁があります(した)か。また、それをどう乗り越えたか教えてください。
臓器別診療科研修中に指導医から総合医として働くことの意義を理解されない、総合医に合わない研修内容を提供されるなど、他科の理解が乏しいこと


ワークライフバランスについてのお考えや、何か工夫されていることがあれば教えてください。
規模が大きい家庭医療診療所ではグループ制にして在宅当番のローテーションをすべき
主治医が24時間365日オンコールは無理がある


今、力を入れていることや、今後やりたいこと、興味のある分野について教えてください。
臨床研究 診療の質の評価と改善 患者安全


家庭医療(総合診療)を志す学生や医師にメッセージや今後の意気込みなど一言お願いします。
家庭医は非常に幅広い健康問題を扱うため飽きがきません。毎年何かしらの発見があり、学ぶことが楽しいです。ルーチンワークが嫌いで、いろいろなことをやってみたい方にはおすすめの進路です。

115.海外 男性 医師17年目

出身大学はどこですか?
愛知医科大学


初期研修はどこの病院でしたか。また、初期研修のあと専攻医になるまでの経歴があれば教えてください。
みさと健和病院


所属、または卒業プログラム名を教えてください。卒業と現所属のPGが異なる場合、両方お書きください。現所属PGでトップページに振り分けます。
卒業:地域医療振興協会(JADECOM) 地域医療のススメ  現所属:クイーンズヘルスケアセンター(ハワイ)


専攻医1年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
石岡第一病院 1年


専攻医2年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
神津島診療所 6ヶ月オレゴン健康科学大学(OHSU)家庭医療 3ヶ月
石岡第一病院 3ヶ月


専攻医3年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
石岡第一病院 1年


それ以降の勤務場所、勤務内容を教えてください。
在沖縄米海軍病院 日本人インターン
ハワイ大学家庭医療科 レジデント
ハレイワファミリーヘルスセンター 指導医


現在の勤務先と、勤務内容について教えてください。
クイーンズヘルスケアセンター ハレイワ 
常勤家庭医として診療所勤務。生後4-5日の新生児から高齢者、メンタルヘルス、超音波ガイド下関節等穿刺や皮膚良性腫瘍切除、避妊インプラントの挿入といった手技など、お産とギプス/シーネ以外のプライマリケア


初めて総合診療医に会った、総合診療医のことを知ったのはどんな時でしたか?
医学部5年の病院見学の際、見学したいと思う専門を決めきれず、ふと目に留まったのが家庭医療という専門でした。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修しようと思った理由、総合診療医になろうと思った理由を教えてください。
様々な疾患を見たり、家族全員のケアが出来るのが楽しいと思った。
島全体で医師2名体制の、神津島診療所勤務で特にそう思いました。


プログラムや勤務病院選びの際にはどのように情報収集しましたか?
インターネット。


進路選択で重視したポイントや、プログラムを選択したポイントは何でしたか?
場所、人。


専攻医、総合診療医になる前に、心配だったことがあれば教えてください。また、不安がその後どうなったのか教えてください。
特に心配や不安はありませんでした。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修してよかったこと、総合診療をやっていてよかったことを教えてください。
毎日、知らないことや手技も含め、色々な患者を見るので飽きない。色々な人や家族の人生を垣間見ることが出来る貴重な体験ができて楽しいです。


専門医を取るに当たって、あるいは総合診療医として働いていてどのような障壁があります(した)か。また、それをどう乗り越えたか教えてください。
*ハワイの場合
初っ端から専門医に紹介してくれ、という人。
特にかかりつけで医師-患者関係ができている場合、時間をかけて説明をすると納得してくれることが多いです。それでも場合によっては「えい、やっ」と紹介してしまうこともありますが...(特に新患で訴えの多い人)。


ワークライフバランスについてのお考えや、何か工夫されていることがあれば教えてください。
ハワイでの研修医の頃、整形外科指導医の一人に、「若い頃は仕事ばかりしていて、子供達とは休みの日も全然関わっていなかった、キャンプだって一度も一緒に行ってあげたことはなかった。今は子供達も大きくなって皆んな出て行ってしまい、プール付きの広い家も必要なくなったので小さい所に引っ越した。お金は貯まったが、子供達が帰ってくる事もあまりない。先生は、特に子供が小さいうちは、できる限り一緒に遊んで思い出を沢山作るといいよ。」と、悲しそうな顔をして言われたのを今でも覚えていて、モットーにしています。


今、力を入れていることや、今後やりたいこと、興味のある分野について教えてください。
下の子がまだ小さいので、今は毎日を必死に生きています。
子供がもう少し大きくなって時間ができたら、多少アカデミックなことや、運営上の事も少しやってみたいと思っています。


家庭医療(総合診療)を志す学生や医師にメッセージや今後の意気込みなど一言お願いします。
多くの患者の場合、家庭医が最も頻繁に顔を合わせる医師であり、最も医師-患者関係を構築しやすい専門だと思います。何科の医師であろうと医師-患者関係はとても大事ですが、医師-患者/家族関係が良好だと、日々の診療がとても楽しくなります。また予防医療を実践し、病気を減らすことができる影響を最も与えられるのも家庭医だと思います。

114. 北海道 男性 医師17年目

出身大学はどこですか?
東北大学


初期研修はどこの病院でしたか。また、初期研修のあと専攻医になるまでの経歴があれば教えてください。
勤医協中央病院


所属、または卒業プログラム名を教えてください。卒業と現所属のPGが異なる場合、両方お書きください。現所属PGでトップページに振り分けます。
卒業したのは「北海道勤医協 総合医・家庭医後期研修プログラム」(現在は新専門医制度に合わせて「北海道勤医協総合診療専門研修プログラム」になっています)。現在指導医として登録しているのは「札幌医科大学 総合診療専門研修 プログラム」です。


専攻医1年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
勤医協中央病院の総合診療科で、1年半の間、総合診療病棟、内科・初診外来、救急外来での研修を受けました。当時は新築移転前で救急車受け入れ台数は多くなく、全救急患者を把握し、必要な主訴・疾患の患者を選んで担当できました。


専攻医2年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
道北勤医協一条通病院の内科で、1年間(2年目後半期~3年目前半期)、一般内科病棟と内科継続・初診外来、訪問診療・往診の研修を受けました。内科各科が揃っていない地方都市の中小規模病院でどこまでやれるかを見てみたくて志望。病棟では人工呼吸器管理から認知症ケアまで、在宅も看取りから安定した高齢者まで幅広く経験でき、一人で幅広く継続的に診る面白さを感じました。


専攻医3年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
3年目後半期は勤医協札幌病院の小児科3ヶ月と、東京の生協浮間診療所での外部研修3ヶ月を受けました。
前者は、病棟診療や重症・急変症例は少ないため手技経験は少ないものの、乳幼児健診・予防接種などの予防医療、Commonな疾患・発達のプライマリ・ケア診療を経験でき、また心理社会的な問題を抱えた家族全体を診る経験も豊富にでき、小児~思春期診療や家族志向のプライマリ・ケアの実践ができました。
後者は、それまで深く学ぶ機会が乏しかった「家庭医療学」の理論的基盤の学習と、診療所ベースの家庭医療レジデンシー運営(診療所や地域での専攻医教育や組織管理など)を学びに行き、濃厚な学びを持ち帰ることができました。


それ以降の勤務場所、勤務内容を教えてください。
4年目は、道東勤医協釧路協立病院で1年間、一般内科病棟と内科継続外来を経験しながら、家庭医療研修プログラムの運営と専攻医指導、多職種共同学習や住民参加型地域ケアの実践など「病院で行う家庭医療」の試行を行い、多くの経験を得ることができました。
その後の10年間(卒後7年目~16年目)は、勤医協札幌病院で「病院家庭医」として、臨床実践、研修医・専攻医教育、小病院や地域での研究などに専念しました。


現在の勤務先と、勤務内容について教えてください。
札幌医科大学 総合診療医学講座です。今まで経験の少なかった卒前・医学生教育と、より高度な量的研究の研鑽、そして大学と行政のバックアップを得ながらの僻地医療システムの構築に関わって学び続けています。


初めて総合診療医に会った、総合診療医のことを知ったのはどんな時でしたか?
「総合診療医」という認識は特にありませんでしたが、子供の頃にかかっていた診療所の医師は喘息を抱えた自分も、様々な症状をついでに相談する親もまとめてみてくれていたので、それが「普通の医師」という認識でした。
家庭医や総合医というのは学生時代に聞いたことはありましたが、大学内では純粋な総合医(領域別専門科との併任や専門医からの転向ではない総合医一本の医師)には出会えず。6年生のときの特別講演で僻地医療に従事されていた先生のお話に感銘を受けたことと、総合診療科選択実習で往診専門クリニックを選択し、病院の設備がなくてもなんでもできる医師をみて感動した経験は大きいです。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修しようと思った理由、総合診療医になろうと思った理由を教えてください。
自分の「医師」のイメージに最も近いため、以前から漠然と総合診療医のようなものを目指していたと思います。学生時代の「何でも見れる医師は、広く浅くなってしまうし、専門医からも看護師からも患者からも信頼されない」という刷り込みで、現代では総合診療が成立しないと絶望していました。
そんななか、たまたまマッチング先探しで勤医協中央病院に行き、自分のことを総合医と自称している医師が生き生きと仕事をしており、他職種や他科専門医と笑顔で協働している様子をみて「総合医になってもいいんだ」と思えて決めました。


プログラムや勤務病院選びの際にはどのように情報収集しましたか?
当時はマッチング制度開始2年目だったので、役に立つ情報が少なく大変でした。
大学内には総合診療系の情報は全くなかったため、当時有名だった巨大医療系メーリングリストのCollege-medに流れてくる研修病院情報(メーリス運営者が実際に全国の研修病院の見学に行き、詳細なレポートを流していた)をみて参考にしていました。
あとは自分で病院のホームページなどをみて当たりをつけ、診療科(総合診療のほか、小児科や産婦人科なども)や地域(東北のほか、関東や北海道も)、規模や機能(1000床レベルから診療所まで)、関連医局(東北大関連とそれ以外の大学関連病院、医局派遣のない病院など)をまんべんなくみて自分にしっくり来る条件を検討しました。
いくつかみる中で感覚がつかめてきて、見学先の研修医や指導医からの情報や紹介も得られるようになりました。


進路選択で重視したポイントや、プログラムを選択したポイントは何でしたか?
初期研修先の選択については、「診療経験や医学知識・技術はどこでも必ず学べるので、土台ができる初期研修では好ましい言動・態度・価値観が身につくところがよい」という話を、当時のメーリスか有名指導医の発言で聞き、深く納得したのでそのとおりにしました。
なので、プログラムに記載されているスペックやコンテンツ、待遇などはあまり気にせず、
総合医が虐げられずに楽しそうに仕事をしていて、自分の仕事・診療科に誇りを持っていること」と、「研修医が個性や関心に沿って、好きなことを自主的に元気そうに学んでいる姿がたくさんあること」、「他職種と医師が陰口を言い合っておらず、カンファレンスも建設的な議論が成立していること」を基準に選びました。その選び方は大正解だったと、今でも思います。


専攻医、総合診療医になる前に、心配だったことがあれば教えてください。また、不安がその後どうなったのか教えてください。
後期研修・専門研修先の選択については、当時いた病院には専門研修プログラムがなく、1号生として自分の希望を反映したプログラムを作ってくれるという話になったため特に心配や不安はなかったです。前例が無いことは、当時の総合診療業界では普通と思っていたし、歴史がありすぎて型にはまった研修しかできないことは避けたかったので性に合っていました。
初期研修先と同じ病院を選ぶことで「他にも良い環境があったかもしれない」という不安は持ちそうでした。そこで卒後2年目にいくつかの病院を見学にいき、「誰かが全部お膳立てして作ってくれた研修環境のなかに、自分にとって理想的な環境はない」ことがわかったのはとても良かったです。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修してよかったこと、総合診療をやっていてよかったことを教えてください。
患者診療をしていて、「患者は専門医志向だから、総合医は相手にされない」ということはなかったし、「総合医は専門医から尊重されないので、無力感を感じやすい」ということもなかったです。とても学び甲斐があり、学んだことが患者診療にダイレクトに反映され、重症患者の救命だけでなく、慢性疾患ケアや予防医療でも患者さんの満足度が高まっていくことを日々実感できてとてもやりがいがあります。
また、総合診療は「幅広く学んで地域や病院のニーズに応えること」が推奨されやすい文化のため、次々新しいことを学ぶことが組織にとって好ましいことと評価されるのは、飽きっぽい自分にとってはとてもやりやすかったです。


専門医を取るに当たって、あるいは総合診療医として働いていてどのような障壁があります(した)か。また、それをどう乗り越えたか教えてください。
専門医資格の取得については、一般的な研修プログラムで研修をしていれば難しくはないと思います。ただ、たとえばできたばかりの小規模なプログラムで、指導医も家庭医療の知識に乏しく、忙しくて指導や振り返りの時間がとれず、他職種と一緒にプロジェクトに取り組む機会もないと厳しいとは思いますので、ある程度はプログラム選びは重要と思います。そのあたりは、プログラム紹介ページなどの情報ではなく、そこで研修している専攻医に直接話を聞いたり、レジデントデイ・振り返りの場に参加して雰囲気を体験することで理解できると思います。


ワークライフバランスについてのお考えや、何か工夫されていることがあれば教えてください。
急性期病院では総合診療医は便利な存在のため、気を抜くと業務過多になりやすいと思います。また、総合診療医を目指す医師は、患者の要望や組織のニーズに応えたい性格・信条の人が多い傾向にあり、多忙さに拍車をかけていると思います。
組織が継続的に発展するために、ワークライフバランスについては個々の医師の個別の事情を十分に把握して、個別化した柔軟な対応が取れる必要があります。そのため、定期的な雇用者・上司との面談の機会があり、組織の雇用ルールの柔軟性や定期的な見直しがあると良いと思います。
わかりやすい指標としては、「男性も育児休暇をとっているか」や「指導医も当直明けにはちゃんと帰宅しているか」、「年休取得率や夏休み・年末休暇の取得状況」などを聞いてみると良いと思います。もう少し砕けた聞き方であれば、見学時に研修医や指導医に「休みはどうしてますか?」と聞くと、休みのとり方について幅広く情報が聞けると思います。
もちろん、いろいろ犠牲にしながら研修に集中する時期があっても良いとは思いますが、そういう研修が合う人と合わない人がいると思いますので、自分にとって心地よい研修の密度や仕組みをいろいろ見ながら検討されると良いと思います。


今、力を入れていることや、今後やりたいこと、興味のある分野について教えてください。
すべての医学部卒業生が、家庭医療や総合診療を「臨床医学の確立した一分野」として当たり前に認識し、総合診療医を目指す人がもう少し増えつつ、それ以外の専門医になるひとも総合診療の良さや限界を理解して建設的な協働が成立しやすくなる世界をつくりたい。そのために1ミリくらい貢献できたら言うことなしです。


家庭医療(総合診療)を志す学生や医師にメッセージや今後の意気込みなど一言お願いします。
もし興味を持っているなら、いろいろ調べるだけでなく、ぜひ数か所見学にいって実際に総合診療をしている人の姿を見て、彼らの口から話を聞き、合う・合わない、好き・嫌いを判断してほしいです。
経験症例数や経験手技数など数値化しやすいところではなく、現場の雰囲気や現場の人々の言動にこそ、総合診療の魅力を感じ取るきっかけや、研修プログラムとの相性を判断する場面があると思います。

114. 福岡県 男性 医師6年目 

出身大学はどこですか?
山口大学


初期研修はどこの病院でしたか。また、初期研修のあと専攻医になるまでの経歴があれば教えてください。
飯塚病院


所属、または卒業プログラム名を教えてください。
飯塚・頴田総合診療専門研修プログラム


専攻医1年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
飯塚病院:総合診療科(3ヶ月)、救急科(3ヶ月)、小児科(3ヶ月)頴田病院:総合診療科(主に病棟を3ヶ月)


専攻医2年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
飯塚病院:皮膚科(6週間)、整形外科(6週間)、膠原病内科(6週間)、腎臓内科(6週間)
頴田病院:総合診療科(主に在宅を3ヶ月)、総合診療科(主に在宅を3ヶ月)

4年間のプログラムのため、関連する科をローテしました
皮膚科・整形外科はcommonであり全員必須ローテでした
膠原病内科は関節リウマチを再燃させてしまったことから、腎臓内科は透析患者への理解や手技を深めることを目的にローテしました。


専攻医3年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
飯塚病院産婦人科(6週間)、総合診療科(外来、6週間)、総合診療科(重症チーム、6週間)、漢方診療科(6週間)
豊田中央病院:僻地研修(僻地の市中病院で6ヶ月)
産婦人科は必須でした。当院はICU・重症・病棟・外来で総合診療科が役割分担しており、ICU以外をローテしました。漢方診療科は、一つの新しい武器として勉強するためローテしました。僻地研修は、奨学金制度の義務年限もありローテしました。


それ以降の勤務場所、勤務内容を教えてください。
豊田中央病院:僻地研修(僻地の市中病院で6ヶ月)
頴田病院:総合診療科(主に在宅3ヶ月)
飯塚病院:総合診療科(病棟3ヶ月)
上記で新家庭医療専門医の資格も満たすようになっています。


現在の勤務先と、勤務内容について教えてください。
飯塚病院で専攻医研修


初めて総合診療医に会った、総合診療医のことを知ったのはどんな時でしたか?
浪人生の時に地域枠での入学を考えていたときの面接対策として、チューターから配られた新聞の記事で読み、家庭医のことを初めて知りました。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修しようと思った理由、総合診療医になろうと思った理由を教えてください。
英国の家庭医療のことが書いてある上記の記事を読み、専門分化した開業が多い現状を踏まえて、今後の日本に必要になる(はず)と直感的に決めました。


プログラムや勤務病院選びの際にはどのように情報収集しましたか?
先輩の先生方に話を聞きました
夏期セミナー等のセミナーでも色々と話を聞きました


進路選択で重視したポイントや、プログラムを選択したポイントは何でしたか?
研修内容としては、将来Hospitalistとして働く場面を想定しつつ、家庭医療学を学べる場が重要と考えて、大病院である飯塚病院とCommunity Hospitalである頴田病院のローテができることがポイントでした。
また初期研修と連続させた方が自分にとってはやりやすい(環境になれるのに時間がかかるタイプなので)と考えたこともあります。
(働く場所を変えると見えるものも違うので、一概にどちらがいいというわけでもないと思いますが…)


専攻医、総合診療医になる前に、心配だったことがあれば教えてください。また、不安がその後どうなったのか教えてください。
専門医制度の開始年であったため、制度運営がどうなるのか心配でした。
変更等が多々あり正直なところ大変でしたが、徐々に整いはじめ専門医機構からの連絡もこまめに来るようになり、徐々に解消されました。
他のプログラムの同期とも連絡を取れていたのも大きかった気がします。


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修してよかったこと、総合診療をやっていてよかったことを教えてください。
はじめは内科と比べて知識が足りないことなど気になっていたこともありますが、BioではなくPhychoやSocialな部分の視点も学ぶにつれて、少しずつ自信もつき、やりがいも感じるようになってきました。


専門医を取るに当たって、あるいは総合診療医として働いていてどのような障壁があります(した)か。また、それをどう乗り越えたか教えてください。
制度の変更がとにかく大変でした。他科との関係性等については、歴史がある程度長い病院だったのでそれほど感じずに過ごすことができました。


ワークライフバランスについてのお考えや、何か工夫されていることがあれば教えてください。
当たり前なのかもしれませんが、睡眠時間は短くしないことを一番大切にしています。


今、力を入れていることや、今後やりたいこと、興味のある分野について教えてください
教育に興味があるので、少しずつセミナー等で学んでいます。


家庭医療(総合診療)を志す学生や医師にメッセージや今後の意気込みなど一言お願いします。
最初は制度や周囲の声におされて大変かもしれませんが、少しずつ自分でできる範囲を広げていけるとやりがいを感じられるかなと思います。
一人では大変かもしれませんが、今はSNS等で同期との繋がりや、Webでの教育支援なども整っているので、ぜひ一緒に頑張りましょう!

113.秋田 男性 医師7年目

出身大学はどこですか?
秋田大学


初期研修はどこの病院でしたか。また、初期研修のあと専攻医になるまでの経歴があれば教えてください。
秋田大学医学部附属病院 たすき掛けで市中病院、診療所にも行きました。
初期研修終了後すぐに後期研修を行いました.


所属、または卒業プログラム名を教えてください。
秋田大学アカデミック家庭医療・総合診療医育成プログラム


専攻医1年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
秋田大学医学部付属病院(内科6か月、救急3か月、小児3か月)


専攻医2年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
市立大森病院(総合診療I 12か月;150床で1.5-2次の規模)
外来診療・在宅診療・入院診療,バランス良く研修することができた.市立大森病院は保健・医療・福祉複合施設の中心施設として,地域包括ケアについて実臨床で学ぶことができた.


専攻医3年目の研修場所、研修内容(期間・目的など)を教えてください。
亀田ファミリークリニック館山(総合診療I 9か月):当時秋田では学べなかった「診療所での家庭医」を学ぶことができた.また,教育に関しても初期研修医のメンタリングなどを行うことができた.
さんむ医療センター(総合診療II 3か月):内科診療だけではなく,産婦人科診療にも触れることができた


それ以降の勤務場所、勤務内容を教えてください。
4年目
亀田ファミリークリニック館山(総合診療I 9か月):3年目から継続.
安房地域医療センター(総合診療II 3か月):病院家庭医としての働き方,患者の退院後の生活を意識した入院診療を学んだ.


現在の勤務先と、勤務内容について教えてください。
秋田大学医学部附属病院:
・大学病院の総合診療部外来の診療
・週1回 地域の2次病院での総合診療科外来診療
・学生の講義,実習対応
・初期研修医の外来指導
・プログラム所属の専攻医の指導(Half day back,月1回のサイトビジット)


初めて総合診療医に会った、総合診療医のことを知ったのはどんな時でしたか?
大学5年生の春休みに,たまたま友人に誘われていった新潟の病院で家庭医が実際に働いている姿をみた.


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修しようと思った理由、総合診療医になろうと思った理由を教えてください。
かつては小児科医になりたかったが,子供だけではなく付添の家族も一緒に見ることができる医師になりたかった(昔の小児科開業医が内科も診ているイメージ).上記の新潟の病院の見学で家庭医の姿を見たとき,まさにこれが自分の医師像だ!と納得した.そのあと総合診療医になろうと思った.


プログラムや勤務病院選びの際にはどのように情報収集しましたか?
進路選択で重視したポイントや、プログラムを選択したポイントは何でしたか?
地域枠入学で県の義務年限があるため秋田県内での選択となったが,そのなかで家庭医のメッカとなるKFCTが連携施設であるプログラムを選択した.


専攻医、総合診療医になる前に、心配だったことがあれば教えてください。また、不安がその後どうなったのか教えてください。
私が後期研修を始める段階では,秋田ではグローバルスタンダードの家庭医療を学べる場所はなかった.後輩に適切に家庭医療の楽しさを伝えられる総合診療医になれるか非常に不安だった.専門医となった今もまだまだ学びは足りないと思うが,なんとかさわりは伝えられるようになったかなと感じている.


家庭医療(総合診療)専門医研修を履修してよかったこと、総合診療をやっていてよかったことを教えてください。
周りの仲間が少ない分,全国の専攻医と知り合いになれたこと.刺激になった.


専門医を取るに当たって、あるいは総合診療医として働いていてどのような障壁があります(した)か。また、それをどう乗り越えたか教えてください。
まだまだ総合診療医が少なく,何ができる医師なのか,他の領域別専門医も患者も知らないことが多い.自分たちでコツコツと魅せていかないとならない.


今、力を入れていることや、今後やりたいこと、興味のある分野について教えてください。
秋田県内での仲間を増やすこと(学生,初期研修医).教育をスペシャルインタレストとして臨床とともに頑張っていきたい.


家庭医療(総合診療)を志す学生や医師にメッセージや今後の意気込みなど一言お願いします。
さまざまな場所で,さまざまなニーズに合わせて働くことができて,一生飽きることのない仕事ができると思います.一度,総合診療医の働く姿を生で見てみてください!